今年で3回目の開催となる「佐田岬ワンダービューコンペティション」。昨年度の受賞作品について、冨永昌敬審査員長に講評をいただきました。映像と一緒にぜひご覧ください。
[サダワン2019:グランプリ受賞作品]『風凜』
グランプリ『風凛』は、かしこまったところの一切ない、とてもフレンドリーな作品でした。それでいて「風と子どもたち」いう確固たるテーマがあって、佐田岬に対する作者のそうした主観がみずみずしいかたちであらわれています。巨大な風車(ふうしゃ)と子どもさんが持つ風車(かざぐるま)の対比は鮮やか。浜辺の積み石と風車が青森恐山の三途の川を連想させて、すごいジョークを盛り込んでくるなと思ったりもして。。。そして何より、やたら音楽をかぶせて撮影時に録音された音を隠しがちな作品が多いなか、家族の声を活かしていることを挙げたいです。これで調子に乗って、また応募してきてください。
[サダワン2019:準グランプリ受賞作品]佐田岬は夢を見る
鮮やかな色彩が印象的な『佐田岬は夢を見る』は、高い映像技術と作品性に評価の声が集まりました。佐田岬の小さな生物たちの息づかいと地元に暮らす人々の営みを並置させる構成は、地元伊方町のみなさんにも喜ばれたと思います。地面を這うようなカメラアングルから小刻みなフラッシュカット、ドローンや水中撮影など、作者の工夫がすみずみまで凝らされた大作です。
[サダワン2019:佳作受賞作品]ワンダラーズ
『ワンダラーズ』は、旅する蝶として知られるアサギマダラと作者のカメラが出会い、一緒に遊んでいるかのようなとても美しいショットに魅了されます。しかし灯台や史跡のような(無難な)有名スポットにも目を向けてしまったのが惜しい。。。アサギマダラひとすじに狙いをしぼり込んでいれば(つまり作者の偏った主観がもっとあふれていれば)、もしかしたらグランプリだったかもしれませんよ。
[サダワン2019:佳作受賞作品]Road to SADA-CAPE
アイディアと体力で勝負した『Road to SADA-CAPE』は、大阪から佐田岬まで自転車で旅をする作者のウェアラブルカメラによって撮られています。台風やパンクという障壁を乗り越えながらひた走り、四国へ渡った瞬間には思わずガッツポーズ。こんな旅なら真似したくなりますねえ(オッサンには厳しいけどねえ)。佐田岬という土地ではなく、佐田岬までの旅そのものを見せてくれる楽しい作品です。
[サダワン2019:佳作受賞作品]みさきへ
『みさきへ』は、ベタなドラマを仲間内で笑いながら撮ったような雰囲気が楽しい作品です。旅立つ女性を見送るために男性が猛ダッシュで高台の公園から港へ。船が出たことを知ると再び全速力で遊歩道を駆け上って大声で手を振る。という姿を追いかけながら佐田岬の起伏に富んだ地形を見せるテクニックと、俳優の(案外本気の)熱演が光る。こうしたドラマ作品がもっと応募作に入ってくるといいなあと思います。
[サダワン2019:奨励賞受賞作品]岬のかなた
地元審査員さんたちの提案で急きょ奨励賞に選ばれた『岬のかなた』は、応募作中ただひとつのイラストレーション映像でした。あとで作者に聞いたところ、実は佐田岬を訪れたのは授賞式の日が初めてで、「大学の夏休みに一人旅で佐田岬に来た」というのはフィクションだったそうです。全然OK。それが本当の創作なんです。
個人的に何らかの賞に推したかったのは『佐田岬 雲の絨毯』なんですが、使っている音楽の著作権の問題(超有名曲を許可なく使っている)で落選となりました。このさい作者に言いたいんですけど、音楽いらないよ、この作品は!あーあ。とにかく、狙いを雲の中の風車だけにしぼって勝負している潔さが最高でした。だから残念。ほんと、むやみに何でもかんでも音楽乗っけるのやめよう。。。
(サダワン2019 最終選考通過作品:「雲の絨毯」※音声が使用不可のためキャプチャ画面でのご紹介とさせていただきます。)