2023.03.30
佐田岬ニュース
【受賞者インタビュー】じいちゃんの生き様、それ即ちワンダー。

2022年にグランプリを受賞した「never Fin.」作者、白潟禎さんにお話を伺いました。

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佐田岬の自然と共に生きる、みかん農家のじいちゃんを撮りたい。

 

妻のおじいちゃんがみかん農家をしているのを知り、興味があったので山へ見に行ったりお手伝いに行ったりしていました。もともとカメラマンとして、この営みの風景を残したいという気持ちがあったんです。

動画も撮りたいなと思っていたところ、サダワンの応募要項の中に「ヒューマン・ドラマ部門」を見つけて、そこでドキュメンタリーいけるんじゃないかなと思い、作品づくりを始めました。

僕は海がない東温市で生まれ育ったので、佐田岬の景色に惹かれたんだと思います。あとは、92歳のじいちゃんが現役でやっているってすごい馬力があるなと思って、それを大きなテーマに据えました。

 

1日の作業の様子を撮影して、それを繋げていくだけだと普通の説明動画になってしまい面白くなかったので、インタビューを差し込んでいくという手法をとっています。

実際にひたむきに働いている姿を見て何かを感じてもらえたらなということで余白を残しつつ、92歳でまだ夢があって…と語るじいちゃんのメッセージを込めました。

 

 

鳥の声、作業音、時の経過を伝える太陽光。

その空気感を、ありのままに届ける。

 

一番最初に山を見に行ったとき、景色や音に惹かれるものがありました。松山で仕事をしているのとは全然違う、季節や時間の経過を感じながら自然の中で働くというのは贅沢な仕事だなと思ったんです。

遠くに八幡浜が見えたり、島が見えたり。時間によって太陽の角度が違うので、海の色も時間の経過とともに変わる。そういう感じを伝えたかったので、撮影時に照明は一切入れていません。画像処理である程度陰影はつけていますが、なるべく外からの夕焼けの光が際立つような編集にしています。

ドキュメンタリーが好きだったので、BGMを入れるつもりはなかったんです。環境音を大事にしたくて。

山を見に行った時、鳥の鳴き声とか、音が一番最初に耳に入ってきたんです。ちょうどヒヨドリがやってくる時期ぐらいから収穫が始まるんですが、そういう音を伝えたいと思いました。

なので、みかんを収穫するハサミのチョキチョキという音も、それだけ撮って映像に合わせたり、1カット1カットの音のボリュームも調整して、見せ所を考えながら強弱をつけて編集しました。

 

じいちゃんは毎朝5時に起きて、味噌汁をつくるのが日課なんです。じいちゃんとその息子さんで農家をしているんですが、2人で朝食をとって、山へ行くというのが毎日のルーティーン。

選別も遅い日は22時くらいまでやっていて…。本当は家の中の生活、そのあたりの人間味ある部分も撮りたかったんですが、断られました(笑)。

この作品をつくっていて思ったのは、ワンダービューという景色じゃなくて、そこに生きる人を通して、何かワンダーな世界を見せたいということ。何か違う切り口で見せたいなという思いがありました。

 

じいちゃんの物語は終わらない、だからnever Fin.

タイトルの「never Fin.」は、作品の最後にFin.と入れて、それからしばらくして思いつきました。おじいちゃんの生き様ともリンクしている言葉だなと思って。

92歳にもなるとさすがにリタイアを考えると思うんですが、おじいちゃんの考え方としては、体が動かなくなるまで仕事をするという。だから、「終わらない、ずっと続くよ」という意味を込めてFinの前にneverをつけました。

 

佐田岬は海が注目されていますが、伊方町って、県内で二番目に人工林率の低い自治体なんです。植林された杉や檜が少なくて、自然の木がいっぱいあって、山桜もきれいに咲いているんです。元の自然のままが残っているので、そういうところも面白いなと思います。

そんなありのままの自然と、自分の感性を掛け合わせたら、無限に可能性はあると思うので、そういうのを楽しんで訪れてもらったらなと思います。

次回も参加しようと思っているので、ライバルとして一緒に頑張りましょう!

 

佐田岬ワンダービューコンペティション 2021-2022

グランプリ『never Fin.』はこちら